大宮の救世主であったはずのベルデニック監督だったが…
昨シーズン監督就任後、すぐに守備を安定させ、リーグ不敗記録21試合を樹立するという快挙を達成したベルデニック元監督の功績は、今も大宮サポーターにとって偉大であることは間違いありません。長年残留争いに巻き込まれてきただけに、彼を救世主扱いするのはごく自然の流れです。ベルデニックの誕生日を、サポーターたちがバースデーソングを歌って称えたのは記憶に新しいところでしょう。
夏に入って5連敗していたとはいえ、ベルデニックを解任するという事態はサポーターにとってありえないこと。解任発表当初、フロントの対応に「早すぎるのでは」という印象を持ったサポーターは、私だけではないはずです。
しかし、例の埼玉新聞の報道。衝撃的な解任劇の裏側を知った今、多少の遺恨は残るけれど、仕方ないことと思う見方が多くあるでしょう。
それにしてもです。ベルデニックとは、一体、どんな監督だったのでしょうか。育成と守備の立て直しには優れた手腕を発揮した一方で、チームの一体感を乱すという…。いろいろな噂はあるようですが、現場を見ていない多くの人たちにとって、ますます謎に包まれた監督であると言わざるを得ません。
名古屋と仙台のスタッフは、この解任撃を予想できたのかも…
市原(千葉)→名古屋→仙台。
過去、ベルデニック監督は、Jリーグで指揮をとっています(横浜フリューゲルスではコーチに就任)。
市原では、後任オシム時代の躍進の礎を作った功績者としても知られていますが、名古屋、仙台では遺恨を残して解任されています。まるでそれは、今回の騒動を暗示していたかのような幕切れだった模様です。ひょっとしたら、ベルデニックをよく知る名古屋と仙台のスタッフは、この解任劇を予想したのかもしれません。
たとえば、仙台では…
ベルデニックはフロントが補強した選手をなかなか起用せず、「せっかく連れてきたのに、なぜ出さない」という不満がフロントにあった
出典元:http://oikose.at.webry.info/200411/article_27.html
違約金として年俸の85%にあたる9700万円を受け取った。これは公表されていた年俸を大きく上回る金額であり、仙台の2005年度の黒字額を大幅に減らすこととなった。これに関してサポーターから強い批判を受けた。
出典元:
Wikipedia
といったことも。
一方、大宮サポにも馴染みが深いサッカージャーナリストのジェレミーウォーカー氏は、自身のブログでベルデニック名古屋監督解任について次のように綴っている。
名古屋グランパスエイトが、土曜日のファーストステージ最終節終了後に監督のズデンコ・ベルデニックを解任したというニュースを聞いて、私はショックを受け、少なからぬ怒りを覚えた。
ベルデニックの名古屋での仕事ぶりは堅実で、素晴らしく、グランパスをJリーグの強豪チームにするためには何が必要であるかをよくわかっている、と感じていたからだ。
(略)
また、ベルデニックは、戦う意志の見えなかった選手を何人かクビにし、どん欲に成功を望んでいる若手選手と入れ替えた、と述べた。
ベルデニックは、ファーストステージはセカンドステージで優勝するための基礎作りの期間だと考えていた。
シーズンは構想通りに進み、グランパスは守備のリーダー役のパナディッチを大森と古賀がサポートして、ゴールキーパーの楢崎の前に強固な壁を形成する、なかなか負けないチームとなった。
(略)
グランパスのフロントによるベルデニック解雇は、あまりに性急であったと思う。ベルデニックは名古屋の前にも市原で素晴らしい仕事をしてきた実績があるからだ。
ベルデニックを解任した裏事情について、私達が知りえなかった場合、彼と同じようにネガティブな感情が蔓延していたかもしれません。名古屋解任時は、その裏事情が出てこなかったとしたら、それはそれで実に興味深い話です。
社会主義を重んじる指導。それがベルデニック流
ベルデニックの指導方法を知るにあたり、興味深い記事が実は残っていました。
それは、スポーツジャーナリストの二宮清純氏が2001年に行ったベルデニック(当時市原監督)のインタビューです。
ズデンコ・ベルデニック 来日前、ジェフが3年連続残留争いをしていて、さらに監督交代に伴って連敗しているということは聞いていました。それを聞くだけでも充分、選手たちが自信をなくしてプレーしていることがわかっていました。
大宮就任時と同じことを言っていますね。
日本は社会主義国家です。私も旧ユーゴという社会主義国家で育ち、生活をしサッカーをしてきたため、日本人の考え方はよくわかります。個人よりも集団を強調するのが社会主義国の特徴ですが、そうであればそこをベースにした指導をすればいいのです
前鈴木監督とは正反対の指導方法ですね。
チームの規律を必要以上に重んじ、厳しい練習を課したことが仇になったのでしょうか。おそらく、社会主義的な指導方法が極端化したのかもしれません。当時の日本とは違い、今の若い人たちはベルデニックが思っていたほど社会主義的な考えは少ないでしょうから、その辺りのズレが監督と選手間で摩擦が生じていた…と想像するのも、また興味深いですよね。
日本でいい仕事をするために、また、チームがいい結果を出すためにはそのチームの雰囲気が大事です。チーム内をいい雰囲気に保ち、トレーニングを行い、試合に臨むことが、大切な条件。いい雰囲気を作るためには、もちろん勝つことが一番。勝つためには、選手やチームへの批判も必要です。間違いをきっちりと指摘するためですが、その前には必ず誉める。
最後の一文は、小倉TDと同じような考えにあると思うのですが、ベルデニックが変わってしまったのでしょうか。
ちなみに、出典元のhttp://justice.i-mediatv.co.jp/verdenik/010724/01.htmlは、すでに削除されているのですが、過去のサイトの状態を時系列で見られるサイト「Internet Archive Wayback Machine」で上記インタビューの全文を読むことができます。
いずれにしても、真相は当事者しか分からないことばかり。
私達サポーターは勝ち点3を奪取するために、新生大宮をただただ応援するしかありません。