少年サッカーの審判の話です。
重要な試合になると審判同士で事前打ち合わせをすることがあります。大会本部から、事前打ち合わせをしてくださいね…なんて言われても、初心者のうちは何をどう何をどう打ち合わせしてよいのかわからないものです。
主審の方が3級審判だったりベテランならば、その方の指示に従うだけで良いのですが、いざ自分が主審を担当することになると、打ち合わせの段取りさえよくわかりません。
先日、師匠と慕う3級審判の方に試合前、打ち合わせを行うべき項目についてレクチャーを受けましたので、備忘録として記録しておきます。
試合前の準備
すごく基本的なことですが、競技規定について事前に確認しておく必要があります。
- 競技時間
- 同点の場合(引き分け、延長、PK、即PKか)
- 登録選手数
- ベンチ入り選手数、役員数および交代可能人数
- メンバー票と選手証の確認(氏名、登録番号)
少年サッカーの場合、競技時間はカップ戦によっては違うことが多いです。予選リーグなら15分ハーフ、決勝トーナメントは20分ハーフなど。Jリーグ、天皇杯、ナビスコカップなども、延長があるのか無いのかなど大会によって変わってくるのと同じです。当然、このあたりは試合前に確認の必要があるわけです。
グランドの確認
グランドの確認は、第一試合の選手団が行います。確認事項は以下のとおりです。
- ゴールおよびネット(ネット補修のためビニール紐およびハサミを携行する。あるいは補修させる)
- ゴールラインおよびタッチライン(この時、自分の何歩が9.15mか確認する。少年サッカーの場合は7m)
- 各エリアおよびマーク
- コーナーフラッグの位置
- ベンチおよびテクニカルエリアの位置
- 主審は使用するボールを確認する(空気圧はU-12=0.8 U-15=0.9~0.85が目安)
Jリーグの試合前、スーツ姿の審判団がフィールドのチェックを確認していますが、まさにこれにあたります。プロの環境ならほとんど問題ないでしょうが、草サッカーや少年サッカーはゴールネットが破れていることがあったり、ペナルティエリア内のラインが曲がっていたりと不備は結構あるように思えます。
先日、友人がペナルティエリアに間違えてコーナーアークを引いていたのには大笑いしましたが、少年サッカーでは普通のお父さんたちがグランド設営をするので事前チェックは必要です。
実際、公式戦では審判部の方たちが厳密にチェックしています。
審判団の打ち合わせ事項
いわゆる全体確認です。こちらは確認事項が数多くあります。
- 時刻の確認(主審の時計に合わせる。時計は本田圭佑ばりに2個用意する)
- セレモニーの有無と方法(大会によって進行方法が異なります)
- 選手を集合させる時間の確認(何分前に集合させるのか)
- 用具チェック(誰がどちらのチームの用具をチェックするのか)
- 4人の役割確認およびアシスタント(副審)の受け持つサイドの確認(ベンチ側、いわゆるA1をどちらの副審が担当するのか)
- アシスタントには位置に付く前にゴールおよびネットの確認をお願いする
- 試合開始直前の合図方法
- ゴール時および警告時のブッキングは誰が行うか
- 重大事件発生時(乱闘など)の各自対応の仕方および試合中や試合後、選手や役員(監督やコーチなど)が詰め寄ってきたときの対応
- 重傷事故発生時の対応の仕方と役割の確認
- ロスタイムの連絡方法と表示の仕方(口頭かボードか)
- 交代手続き(メンバー表、交代用紙、選手、ユニフォームが一致しているか確認)
- 主審の手続きに間違いがあった時の援助(最下位方法、アシスタントジャッジに気がつかない場合)
- 出血者の止血確認(は、誰がするのか?普通、4審。止血は巻いて処置する)
- 怪我の際、ピッチに入れる役員数と持ち物(主審→4審→担架および役員)
- ジャッジの際、またはアウトオブプレー時のアイコンタクトと周囲の確認
少年サッカーの4級審判で、練習試合のお手伝いをする程度ならば、ここまで厳密な確認をすることはありません。
しかし、公式戦になると審判部のレフリーたちは厳密な打ち合わせを行っているようです。少々マニアックな項目がありますが、不測の事態が起きた時こそレフリーの腕の見せどころだと思います。
アシスタント(副審)にお願いする事項
副審についての確認事項は結構話し合います。どれも当たり前のことなのですが、これは重要な確認です。
- オフサイドラインのキープ
- オフサイド判定のタイミング(オンサイドから来る選手の見極め、無用な接触が考えられるなど、十分に確認する)
- ゴールラインまでしっかり走る(選手、役員、観客は見ている)
- スローインの監視分担
- アシスタントサイドでの反則に対する合図の仕方(攻撃側の反則は早めに、守備側の反則はアドバンテージを見る)
- ゴールインの合図の方法(きわどいものを含む→ゴールラインを割った後のクリアおよびかき出し)
- ゴール後、再開までの監視
- ゴールキック、パントキックの監視(確認後、主審と副審とのアイコンタクト)
- ペナルティーキックの位置確認と違反があった時の合図方法(アシスタントフラッグを後ろに回すなど)
- ペナルティーエリア付近の反則がエリアの外か内かの援助(シークレットサインとしてPK位置に回りこむ)
- タッチライン、ゴールラインをボールが出た時のアイコンタクト差し違い防止の方法(主審サイドと副審サイド)
- 各ジャッジの時のアイコンタクト
ゴールラインまでしっかり走る
副審が「ゴールラインまでしっかり走る」のは、とても重要です。シュートが明らかにゴールを割ったとき、副審がゴールラインまで追いかけずにゴールキックのサインを出すシーンをよく見かけますが、これは感心しません。
しっかり最後までボールを追いかけてサインを出す副審ならば、万一、ミスジャッジをしてしまってもクレームも大きくならないでしょう。誰だってミスはしますから。大事なのは、レフリーの真摯に取り組む姿勢です。
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ペナルティーキックの位置確認と違反があった時の合図方法
「ペナルティーキックの位置確認と違反があった時の合図方法(アシスタントフラッグを後ろに回すなど)」についてはPKの際に起こりうるシーンです。PKをキッカーが蹴る前にゴールキーパーがゴールライン上を超えて前に出ると守備側の反則となります。キーパーがもしそのシュートを止めた時は、もう一度やり直しになりますが、ゴールインの場合はそのままゴールが認められます。
キーパーの反則時、副審がフラッグを上に挙げてしまうと、攻撃側のキックに影響が及ぶかもしれません。そうならないために、ゴールキーパーの位置を監視する副審はフラッグを上に挙げず背後に隠すというサインを出すそうです。
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第4の審判にお願いする事項
暇そうに見える4審ですが重要な任務がたくさんあります。
- 実キックオフ時間の記録
- 得点時間および得点者の記録
- 懲戒罰の種別、時間、対象者の記録
- ベンチ内選手および役員のコントロール
- グランド内外の監視
- イエローカード2枚目で退場を忘れた時の援助
- 交代の手続(メンバー表、交代用紙、選手、ユニフォームの確認)
- ベンチ内の役員および選手は大会規定の人数か否かの確認
- ロスタイムの合図
エキサイトした監督やコーチに注意を与えるのも4審の役割です。少年サッカーの場合、この他にもいくつか仕事があると思います。
- 飲水タイムをとる試合で主審がそれを忘れていたら教える
- 試合時間終了1分前に起立して試合終了の時間が近いことを主審に合図する
- 代替ボールの投入
などでしょうか。
代替ボールの投入とは、ボールが遠いところまで転がって行ってしまい、試合をすぐに再開できなそうな時に4審が変わりのボールを渡すこと。ただし、ボールの渡し方やシーンによってはチームに有利不利の差が出てきてしまいますので、主審の指示を待ってボールを投入するようにします。
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まとめ
少年サッカーでここまで厳密に確認している審判はレアケースですが、これらの確認事項を知っておくと落ち着いてジャッジしやすくなります。ミスをしても慌てないレフリングができるようになると思います。